日本文化における時間と空間

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「今=ここ」に生きる日本 その本質を衝く渾身の書き下ろし

編集部からのメッセージ

 今さら著者紹介も不要な加藤周一さんの登場です.健筆を揮われて いる驚異的な長期連載「夕陽妄語」(朝日新聞)を毎月愛読するファンも多いことでしょう.芸術から政治まで――藤田嗣二から愛国心教育まで――,その力強 い筆によって鏡に映しだされる日本の姿は,そこに暮らす私たちにいつもある種の衝撃を与えます.
 本書では文学作品や絵画作品などが数多く参照されますが,焦点はシンプルに2つ,時間と空間です.日本文化の特徴として個別に論究されてきた諸現象(短 詩型の嗜好,アシンメトリーの美など)が,この2つの軸に貫かれることで,さらにヨーロッパや中国との鮮やかな比較によって,一層くっきりとその本質的な 意味を浮かび上がらせてくるのです.そしてなによりズシリと読む人の胸に響くのは,この文化論の向かう先が,まさに今の日本の現実そのものであることで す.
 著者が長らく構想してきた日本文化論の集大成として久しぶりの書き下ろしとなった本書は,美学と思想史の角度から日本の近代以降の歩みを再考し,今日の日本,そしてわれわれ自身を相対化するために必読の一冊です.


著者略歴

加藤周一(かとう しゅういち)
1919年東京生まれ.東京大学医学部卒業.文芸評論家・作家. 1951年渡仏. 1955年帰国. 主な著書に 『私にとっての20世紀』『羊の歌』(正・続,以上岩波書店),『日本文学史序説』(上・下,筑摩書房),『夕陽妄語』(朝日新聞社),『加藤周一著作 集』(全24巻,平凡社),『加藤周一講演集』(全3巻),『加藤周一対話集』(全5巻・別巻1)『「日本文学史序説」補講』(以上かもがわ出版)など.


目次

はじめに
「今=ここ」に生きる
概念的枠組
本書の構成

第一部 時間

第一章 時間の類型
ユダヤ教的時間/古代ギリシャの時間/古代中国の時間/仏教における時間/『古事記』の時間/日本文化の3つの時間

第二章 時間のさまざまな表現
日本語の特徴
  語順/時制
  日本語の文学
    物語の文体/抒情詩の形式/連歌の「今=ここ」/俳句の時間/随筆の特徴
  芸術と時間
    「音色」と「間」の音楽/身体表現/絵画のなかの時間

第三章 行動様式
神仏習合から脱信仰へ/大勢順応の貫徹と内面化

第二部 空間

第一章 空間の類型
ヨーロッパ文明の空間/中国文明の空間と東アジア世界/創世神話の空間認識/閉じられた空間/ムラの内と外/遠方とムラ/空間の3つの特徴

第二章 空間のさまざまな表現
建築的空間
  茶室の空間/水平線志向/非相称性の美学
  絵画の空間
    開閉する空間と絵画/主観主義への傾向

第三章 行動様式
開閉する対外関係/共同体の開閉と集団主義

第三部 「今=ここ」 の文化

第一章 部分と全体
第二章 脱出と超越
脱出願望について/「今」からの脱出/「ここ」からの脱出/亡命という選択/時空間の超越

あとがき




Copyright 2007 Iwanami Shoten, Publishers. All rights reserved. 岩波書店

 

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